創世記のジャズ教本 (1)

ジャズピアノ&作・編曲教本

『婦人画報音楽講座5 : 軽音楽の技法上・下』(杉原泰蔵他/婦人画報社)1948〜49年

先に紹介した「アルス音楽大講座」は戦前発行されたものだが、以下は戦後まもなく発行された教本である。まだまだ創世記の教本と言えるが、それらを紹介していきたい。

 

先に紹介した「アルス音楽大講座」と同様に日本のポピュラー音楽を牽引してきた人たちが多数執筆している大変貴重な教本ではないだろうか。上下2巻あるがジャズ・ピアノに関しては上巻P131〜153で杉原泰蔵が「ジャズ・ピアノの奏法」と言うタイトルで執筆している。本書が発行された時期と言えば、アメリカでようやくビ・バップが誕生した頃なので、日本にはまだ入ってこなかったであろう。したがってスイング・スタイルのピアノ奏法について書かれてある。

杉原泰蔵執筆の内容をざっと紹介すると、全部で6章、まず第1章(P131〜)で著者は、「ジャズにおける3つの合成的要素は、(主題)、(楽器)、(演奏者)であり、優れたジャズは歯切れの良いアクセントにある。」とリズムの重要性を強調している。そのため、第2章(律動リズム:p132〜)では左手の「ウォーキングベース」、両手の「三連符」、そして「ポリ・リズム」を使用した演奏例を示している。第3章(旋律melody:p140〜)では動的音と静的音(休止)のバランスを保ち、即興的に洗練された感覚を持つことを指摘している。第4章和声(Harmony:P143〜)では「Major、Major6th、Dominant7th、Minor、Minor6th、Minor7th、Diminith、Diminith7th」の各コード、36を掲載している。また、ブギウギ奏法の左手のパターンリフについて、またAからAbのKeyへ、AbからFのkeyへ、CmからBbmのkeyへと、それぞれの転調の方法を示している。さらに「Voice-Leadingに対する暗示」、「コントラモーション」、「ダブリングの悪い例」、「ダブリングの許し得る例」、スムーズな「ジャズの解決」、「ジャズのPoly-Tonality」について書いている。第5章(P150)はクラシックとジャズの「運指法」の違いを指摘している。そして第6章 (P151〜153)は3ページに渡って、総体的な演奏例が示されている。

尚、杉原泰蔵以外のタイトル、著者名は以下の通りである。

上巻:ジヤズの編曲(紙恭輔)、コ-ド(和音)について(服部逸郎) 、サキソホンの奏法(芦田満) 、トランペットの奏法(南里文雄)、 トロンボ-ンの奏法(谷口又士)、 ストリング・ベ-スの奏法(渡辺良) 、ジヤズ打楽器の奏法(田中和男) 、ジヤズ・修業の回想(藤山一郎)、 修業の回想(笠置シズ子) 、ジヤズ名演奏家覚え書(野川香文) 、ウエイリツクの編曲法について(仁木他喜雄)。

下巻:タンゴの編成と編曲(宗知康)、ハワイアンの合奏法(灰田晴彦)、アコーディオンの奏法(小暮正雄)、スパニッシュギターの奏法(伊藤翁介)、スチールギターの奏法(バッキー・白片)、ジャズ・ギターの奏法(角田孝)、ウクレレの奏法(灰田晴彦)、ヴァイオリンの軽音楽的奏法(櫻井潔)、ハーモニカの奏法(南部信喜)、タンゴの歌い方(高橋忠雄)、ジャズの歌い方(ベティ稲田)ブルースの歌い方(淡谷のり子)、ジャズの合唱(中野忠晴)軽音楽の形式(野川香文)、ジャズの歴史解説[名著解説](服部龍太郎)。

 

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