日本におけるジャズピアノの教本は誰によって、いつ書かれたのだろうか?
日本で初めてジャズの演奏を行ったのは、バイオリン奏者の井田一郎で、1923年神戸において日本で最初にジャズを演奏したと言われているが、同じ頃、慶応大学の学生であったピアニストの菊池滋弥は1919年に渡米し、ディキシーランド・ジャズバンドのレコードやジャズ教則本の執筆のためにジャズの資料を多く持ち帰ったとされている。
その菊池滋弥も執筆者の一人として加わっている、以下の本が日本人による最初のジャズ・ピアノ教本ではないかと思われる。(ちなみに邦訳本なら、先に紹介した「邦訳ジャズピアノ奏法 Book 1 (Vincent Lopez /東京音楽書院) 1936年がある」)
『アルス音楽大講座第9巻実技編ジャズ音楽-ジャズピアノの奏法』(菊池滋爾、他/アルス)1936年
内容はコードの説明の他、「スイングベース表(上図中)」、「モダン・ハーモニー(上図右)」、「ペンタトニック」「ブルース」についても書かれている。
1936年と言えばアメリカでもまだビー・バップ(モダン・ジャズ)が生まれていない時代、従って、本書はブギウギやスイングピアノの奏法についての教本なので、「モダン・ハーモニー」と言っても、6の和音(13th)の使用例が書かれてあるだけなのだが、全体として、内容はとても充実している。
ちなみに本書は、他に古賀政男、服部良一、灰田勝彦、など日本のポピュラー音楽を牽引してきた人たちが執筆している。まだ彼らも20代後半から30代の若かった頃だ。そう言う意味でも一読の価値があるだろう。
各執筆者のタイトルは以下の通りである。
- 「ジャズの歴史と現勢」(服部龍太郎)
- 「サキソフォーンの奏法と練習曲」(服部良一)
- 「ジャズ・ピアノの奏法」(菊池滋爾)
- 「アコーディオンの奏法と練習曲」(小暮正雄)
- 「ギターの奏法と練習曲」(古賀政男)
- 「ハワイアン・ギターの奏法と練習曲」(灰田晴彦)
- 「バンジョーの奏法と練習曲」(角田孝)
- 「ウクレレの奏法と練習曲」(灰田勝彦)
- 「 マンドリンの奏法の奏法の要點」(田中常彦)
- 「各種ジャズ打楽器の奏法」(仁木他喜雄)
- 「短音階ハーモニカの奏法」(佐藤秀郎)
- 「流行歌の唄ひ方」(徳山璉)
- 「ジャズ合唱」(中野忠晴)
- 「ダンス曲の種類と形式」(井田一郎)
- 「ジャズの編成と編曲」(紙恭輔)
- 「トーキーとレビュー音楽」(堀内敬三)
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