無分別智の現代音楽:ジョン・ケージからメディア・アートまで

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無分別智の現代音楽:ジョン・ケージからメディア・アートまで

 分かるは、分けるとも言いますが、人は事物を分別(ふんべつ)して、その数をどんどん増やしていく。国籍、年齢、性別、優劣、損得、善悪、、、、、しかし、過度な分別は差別や偏見を生む要因ともなるのです。そのため、仏教では分別は否定され、無分別が勧説される(仏教用語では「無分別智」と言う)。
 ただし、「無分別」とは、無秩序やデタラメのことではありません。固定された事物の分別を一旦無記とし、そこから新たな事物と事物の関係を構築することに他ならないのです。換言すると世界をありのままに見ると言うことです。
 例えば、宇宙飛行士は、宇宙船から地球を見た時、国境がないのに驚き、人生観が変わると言いますが、それは我々が通常認識しているのが分別された地図による色眼鏡の世界だからです。 ¥

 音楽でもそれは同様です。音楽は音楽からは作れません。従って固定された音楽という分別から開放された「無分別智の音楽」、つまり「音楽でない音楽」を表現し続けることが必要ではないでしょうか。それはまた「音楽とはなにか」という単純かつ究極的な問いにもなるのです。
 本書はそのような「無分別智」の理念の基、2004年以降、拙書、雜誌、展覧会カタログ、アルバムライナーノートなどで、表した文章を若干加筆し、まとめたものです。尚、中には重複する文も含まれてるため、その部分は削除することも考えましたが、文章全体のバランスを考え、そのまま掲載したことをお断りしておきます。
いずれにしても読者の方々が、本書を読まれ、若干の刺激と功徳を感じていただければ幸いです。

目次
はじめに
・Chaosmos:間-共創成へ向けて
・無分別智の芸術:ジョン・ケージからメディアアートに気づく

1. はじめに 2.仏教とは何か 3.無分別智(A(空)、B(構造主義)、C(無常)4.Chaosmosの実践プロセス 5. 無分別智とジョン・ケージの音楽 6.サウンドアートとメディア・アート 7. メディア・アートとしての音楽
・フリー・インプロビゼーション
1.自由とは 2.即興とオートポイエーシス 3.自己了解の音楽 4 タジ・マハール旅行団 5.集団即興の展開
・湯浅譲二の音楽思想
・近藤譲とポスト構造主義
・仏教美学:無分別智の芸術から共創成へ

1. 柳宗悦と不二美の願 2.分別と無分別智 3.自在と直観 4. 仏教美学の実践:一遍の捨聖と踊り念仏 5.河井寛次郎の造形 6. 現代芸術における無分別知智~ジョン・ケージの音楽 
7. 環境芸術から共創成へ:池田一とアースアート
・美術家にして音楽家:西良三郎の共感覚
・横尾龍彦帰国記念展覧会「みちすがら」トークセッション『今日の芸術の役割と意義』報告と感想
・ライナーノーツ by 河合孝治
・即音・無分別

・ジャズ・ピアノ&作・編曲教本のアンソロジー
        

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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